自分の髪質を知っているか

常連のお客さんの「イメチェンしたい」と言う思いに対して、どうしても消極的になってしまう美容師の心理の一つとして、そのお客さんの髪質をよく知っているからこそ、今のヘアスタイルがベストだと思っている、と言う事があるのだと思うのです。たとえばクセが強い髪質の人に対して、これまでできるだけクセが抑えられるようなヘアスタイルを作ってきて、スタイリング方法も伝授してきていたとします。おそらくそのヘアスタイルに慣れてきたお客さんの方でも、今のヘアスタイルやスタイリング方法に慣れてきていると思うんですね。だからあまり自分の髪の毛の質にたいして意識しなくなってきてしまっていたりします。そして何かの拍子にその事を忘れて「イメチェンしたい!」となるわけです。青山でメンズに人気の美容室は縮毛矯正美容師にとっては「それはあなたの髪質では無理です」というようなヘアスタイルを希望してしまったりする可能性もあります。そういう時には美容師はとても悩ましいと思うのです。イメチェンしたい、と言う気持ちは相当の勇気をお客さんは持っているのだと思われます。それをやる前から否定するような事は美容師としても言いたくないに決まっていますが、それでも「このお客さんに対してはこれがベストなヘアスタイルなのに」と思ってしまう事は有ると思われます。せっかく大きくイメチェンしようと思ってお願いしたのに、思ったほど変わったように見えない、という経験をした人もいるのではないでしょうか。自分ではかなりの変化をオーダーしたはずなのに、なんだかあまり変わった気がしない、というのは、多くの場合いつもお願いしている担当美容師さんにお願いした時に起こりうることだと思われます。それは美容師に思いが通じていなかったから、とか美容師がその時に限って下手だったから、と言うような事ではないと思われます。おそらくですが、イメチェンと言うのはお客さんにとっても大冒険であると同時に、美容師にとっても相当覚悟がいる事だと思うんですね。これまで美容師なりに「この人にはこのスタイルが似合う」と思って提案して作ってきたヘアスタイルを「これではないものにして」と言われている訳です。最善を尽くしていたのに、さらに最善を尽くして全く別のもにして、と言われているんですね。そうなるとこの状況でお客さんに満足してもらう、というのは相当ハードルが高くなるわけです。おそらく「こうした方が良い」という積極的な姿勢ではなく、「これは辞めておいた方が良い」「これは似合わないかもしれない」と言う消極的な気持ちが何処かしらで働いてしまっているのではないでしょうか。